備中地方「祝言節」

記録者

歌唱:新見市千屋「肥田 稔」氏

記録者:新見市足立「太枝梅夫」氏


由来

 「祝言節」は備中北部地方、奥日野地方の婚礼の祝い唄として歌い継がれて来たものである。

昭和半ば頃までこの地方の婚礼は自宅で行われ、輿入れは夜を常としその祝宴は翌朝まで続いたのである(昼に行う様になった当初は行列の先頭に一対の提灯を揚げその名残を止めた)。

花嫁の一行は徒歩で婚家に向かったのである。輿入れの荷物(箪笥=タンス、長持ち等々)は担ぎ人足を雇い、花嫁の行列と共に婚家に着き納められるのである。

花嫁が生家を出るとき、道中婚家に着いたとき荷物の受け渡し等々の挨拶を全て唄で遣り取りするもので、その唄が「祝言節」である。

従ってこの唄は婚礼には大変重要で、歌い手を頼み行列に入れたものである。

 

2003年07月30日、この「祝言節」を後世に残す為、今では数少ない歌い手の一人新見市千屋の「肥田 稔」さんにお願いし、これを継ぐ生徒さん達と共に、この「祝言節」の勉強会と録音を行いました。

この記録はそのときの模様と貴重な音源を紹介しています。

勉強会・録音風景

歌曲

(音声データをダウンロードしてお聞きください。歌詞と録音の内容は多少異なっています。)

1.花嫁が生家を出る時の唄

・今日は日もよし天気もよいし、結び合わせて縁となる。

・芽出た芽出たの若松様よ、枝も栄えて葉も繁る。

・蝶よ花よと育てた娘、今日は他人の手に渡す。

・私しや行きますふた親様よ、長のお世話になりました。

・私しや行きます義姉上様よ、後のふた親頼みます。

・私しゃ行きます友達様よ、後で立つ名も立たぬよに。

・私しゃ行きますふた親様よ、今度来るときゃ二人連れ。

音データ無し


2.花嫁の道中での唄(沿道より”所望=しょもう”の声に答えて)

・ここは道中みち中なれば、唄で御挨拶致します。

・ここは道中みち中なれば、何の愛想もありませぬ。

・ここはだい坂一人じゃ越せぬ、殿の手引きを 待つ心。

・そこを廻れば殿御の村よ、頼みますぞや皆様方よ。

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花嫁の道中での唄
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3.花嫁が村に入っての唄

・村に入ってかつぎ(冠衣)をとりて、頼みますぞや皆様方よ。

・とろりとろりと来るこたきたが、どこが殿御の館やら。

・遙か彼方の八棟造り、あれが殿御の館なる。

・この鼻廻れば殿御の館、あれが嫁御を待つが家。

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花嫁が村に入っての唄
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4.花嫁が婚家に着いた時の唄

・来たぞ嬉しやかどまで来たぞ、恵比寿大黒お迎えお。

・かどにかかりて扉が開かぬ、開けて下され御門番。

・連れて来ました不束者を、どうかよろしゅう頼みます。

・かどに杖して床の間見れば、床の欄間に鶴と亀。

 

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花嫁が婚家に着いた時の唄
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5.花嫁を迎える唄

・姑大黒婿様恵比寿、ござる嫁御は福の神。

・嬉し芽出たの三つ四つ五つ、五つ重なりゃ五葉の松。

・姑大黒婿様恵比寿、ござる嫁御は福の神。

・嬉し芽出たの三つ四つ五つ、五つ重なりゃ五葉の松。

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花嫁を迎える唄
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6.花嫁方の人足の唄

・鶴が舞いますこの家の空で、この家繁昌と舞あそぶ。

・こちのお家のお庭の松に、鶴が巣をかけ子を育つ。

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花嫁方の人足の唄
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7.荷物を渡す唄

・箪笥長持ちつづらに皮ご、あまた荷物を渡します。

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荷物を渡す唄
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8.荷物受け取りの唄

・箪笥長持ちつづらに皮ご、あまた荷物を受け取りまして

・床の欄間にひとまず置いて、西の倉にと納めます。

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荷物受け取りの唄
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9.納めの唄

・千秋万歳楽想うこと叶た、鶴が御門に巣をかける。

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納めの唄
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終わりに